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妊娠おめでとう、とわたしが言わない理由

執筆者の写真: Yuriko YamamotoYuriko Yamamoto

更新日:2024年11月20日

先日、無事クリニック開院1周年を迎え、さらに新規開業クリニックの登竜門である厚生局の新規個別指導も無事終えることができました。ここまで一歩一歩自分が歩んできたことの裏側に家族のサポート、スタッフの期待以上の働き、友人の応援があったことを心から感謝しています。もちろん、当院を信頼して通院してくださる皆様にも心からのありがとうを伝えたいです。


さて、先日妊娠で受診され、胎嚢(たいのう:赤ちゃんをつつむ袋)を超音波検査で観察することができた方がいました。その日の勤務の締め作業をしていた事務の方が、「先生、○○さん、先生におめでとうと言われなかった、と気にしていましたよ」と声をかけてくれました。確かに、妊娠を俗に「おめでた」と言ったりすることもありますし、妊娠しておめでとうと言われなかったら何か問題があるのかもしれないと思う人もいるのかもしれないですね。言われるまで気が付かなかったのですが、わたしが妊婦さんにおめでとうと言わない理由をここでお話ししたいと思います。


ずっと待ち望んだ妊娠、思いがけない妊娠、ほしかったけどこんなに早く来るとは思わなかった妊娠、避妊にはとても気を付けていたのにまさかの妊娠、など皆さんいろんな経緯で妊娠の診断を受けに来ます。診察室に入ってきたときの雰囲気でなんとなく察することができる場合も少なくありませんが、診察室という非日常の場で感情が読み取れないという場合も多くあります。


わたしは、妊娠をできるだけニュートラルにうけとめたいと思っています。喜んだり、悲しんだり、がっかりしたりするのはご本人とその家族の気持ちで自由。こちらのエネルギーと妊婦さんのエネルギーがかみあわなかった場合、妊婦さんが言いたいことが言えなかったり、感情を抑え込んでしまったりすることが懸念されます。妊娠をよろこんでいる方と一緒に喜ぶことはわたしの幸せでもあるのですが、そこは毎回毎回が真剣勝負です。


また、おめでとうを言わないもうひとつの大きな理由は初期流産の可能性です。5週の胎嚢確認、7週の心拍確認のあたりはまだまだ順調な経過となる保証ができない時期です。次の健診で受診したら出血もなくて、つわりもあるのに流産の診断、ということもめずらしくありません。


妊娠12週くらいまで来ると流産の可能性はかなり低くなりますが、それでもゼロはなりません。いつも最悪の可能性を予期しながら、でもそんなことは顔には出さず涼しい顔でエコーをあてています。本当に心から安心しておめでとうと言えるのは、その方が元気な赤ちゃんをだっこしてから。わたしは妊婦さんの喜びも悲しみも受け止められる存在でありたいと思っています。


 
 
 

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